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陶芸家の森の日々                      ~佐藤火圭(けい)ワールドへようこそ!

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みなさん、さようなら (by 弟子)

突然ですがみなさん、私(弟子)は一身上の都合により当工房を去ることになりました。半年という短い間でしたが、工芸職人の生業を垣間見る貴重な体験を得ることができ幸いでありました。
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写真は、工房の敷地内を流れる渓流のわきの池です。今朝は氷が張って、山女魚(やまめ)を見ることができませんでした。山女魚は渓流の女王と呼ばれ鮭の仲間でトラウト(鱒)の一種です。
私はこの地上の生物の中で何が一番好き?という質問をされたら、「鮭」と答えるような気がします。食べても美味しい鮭ですが、もちろん理由はそうではありません。
秋に北海道を旅行した時、知床や礼文の河などで多くの鮭やカラフト鱒の遡上を見ました。背中を真っ赤に色づけて、産卵床を求め上流に向かって泳いでいました。小さな滝のような落ち込みの前の淵ではたくさん群れていたりしました。
ご存知のとおり、鮭は産卵した後、オスもメスも精根尽き果て死んでしまいます。産卵を終えた直後の鮭は抵抗力が弱り、背なかには感染症の白い浮腫ができ、背ビレも尾びれもボロボロです。死骸が上流から流れてきたり、岸辺に打ち上げられていたりするのもよく目にしました。
北米のキングサーモンや北海道のイトウなどは産卵後も生きるらしく、体長が1メートルを越えるものもいますが、日本の銀鮭は一生に一度の恋の季節で人生(鮭生)に幕を下ろします。
鮭は嗅覚がすごいらしく、自分の生まれた故郷の川の匂いを覚えているといいます。それで間違えることなく帰ってくるそうです。だから北海道では海で鮭を釣るのはいいが、川では釣ってはいけません。その川の漁協の鮭だと認定されるからです。
必ず故郷の川に戻り、そこで自己の持つすべての生のエネルギーを使い果たす恋をして一生を終える鮭。自己の使命に忠実に生きているのは他の生物も一緒なのかもしれませんが、鮭のそれは恋のエロスで輝いているように見えるのです。死の直前に生の絶頂の喜悦の(歓喜の瞬間に見えるのは僕だけかもしれませんが)形相を見せます。オスもメスも口を最大に開き、体全体を硬直させるように震わせる。死ぬほどの歓喜におののいているかのようです。まるでワーグナーの「トリスタン」の「愛の死」の世界です。
鮭の一生は、マッキンリーで死んだ植村直己の人生を僕に思い起こさせます。なぜ登山家はそこに行くのでしょうか?まさか嗅覚で山に呼ばれるわけではないでしょうが、死と表裏一体の激しい生を生きるということ。絶頂での死。すごいと思いますし、なんだかうらやましいのです。
さて、私はこれから独学で陶芸の修行を働きながらしようと思います。ゴスペルの母と呼ばれたマリヤ・ジャクソンも美容師をしながらス好きなピリチュアルだけを歌ったようですし、彼女を見習って頑張ります!ではみなさん、さようなら。これからはこのブログをそとから見ます(笑)。
by sueki-k | 2008-12-26 21:09