陶芸家の森の日々                      ~佐藤火圭(けい)ワールドへようこそ!

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カテゴリ:焼物の専門的な話( 15 )

境界膜の話

一昨日、熱電対の話をしました。
ついでに思い出したので「境界膜」の話をします。
これは私が京都工芸繊維大学にいたころに、窯の教授から受けた講義です。

物にはすべて境界膜というのがあるのだそうです。
例えば壷にも境界膜があります。それはそのものとそれ以外のものの間にあるもので、物質的にはその場合空気です。
窯での正確な温度はこの境界膜を除かないといけないのだそうで、1000度の窯内を測る場合、空気を吸入して境界膜を除くことによって正確な温度が測れるのだそうです。実際にそういう方法で測りました。
もっと分かりやすく話すと、熱いお風呂に入った場合、じっとしていると熱さが緩和されますね。あれは境界膜が保護してくれるからです。また扇風機も境界膜をとってくれるために涼しく感じるということがあります。もっともその場合、気温が36度以下の限られます。気温が体温以上の場合はじっとしているほうがいいかもしれません。ま、この場合は汗の気化熱が関係してくるので、必ずしもそうとはかぎりませんがね。

境界膜の話は、科学の世界で1度でも正確に測りたい場合に有効な話であって、我々の焼き物の場合は無視してもよいでしょう。

きょうはかなりマニアックな話でした。
でもこの話、人間世界のにもありそうですね。
たとえば、じっとしている人間=ひきこもり人間などは境界膜が厚そうですし、私のように動き回っている人間は、境界膜が薄そうです。境界膜が薄いほうが、世界を直に感じられていいと思うのですが・・・
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by sueki-k | 2014-04-21 23:21 | 焼物の専門的な話

温度計の話

窯焚き4日目です。
窯には今は温度計がついていますが、昔はありませんでした。
温度は火の色で見ていました。
赤黒い色からだんだん明るくなり、温度が上がってゆくと白っぽくなります。
現代では「熱電対」という温度計があり正確に計ることができます。
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これが熱電対で、窯に差し込んであります。
計量器に温度が表示されます。
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さてこの熱電対はどんな構造になっているのでしょうか。
このあたりはプロの陶芸家も知らなかったりします。
ちょっと専門的な話ですが、知っておいても無駄にはならないでしょうから、説明しますね。

この熱電対は筒の中に電線が二本あり、その先に2種類の金属片があります。2種類の金属を接するとそこに微電流が流れます。その微電流は温度によって変化します。それを計測すると温度が分かるのです。
原理は簡単ですが、実際には難しい。故にこの熱電対は高価で、10万円くらいします。

私は京都の登り窯で修行したので、温度計は使いませんんでした。もし私ひとりで窯を焚くならこの熱電対は使わないのですが、弟子など初心者に焚いてもらう場合はこれが有効なので使っています。寝ている間に「1時間に30度温度を上げるように」と指示すればいいので楽です。
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by sueki-k | 2014-04-19 23:23 | 焼物の専門的な話

乾燥

きのう、きょうと我が工房では「工房開放」という一種の陶芸教室がありました。穴窯が近いので、生徒はいろいろな作品や大作を作っています。そこで大切なのは乾燥です。
ゆっくり乾かさないと、特に大作は底にヒビが入ります。
ちゃんとした仕事場ですと「室(ムロ)」というのがあり、そこで乾かします。室というのは、要は戸をつけて密閉できる1畳くらいの棚です。下には水が張れるようにしてあり、そこのに入れるとゆっくり乾かすことができます。遠野の仕事場には室がありましたが、今の私の仕事場にはないので、写真のように布をかぶせてゆっくり乾かすことにしています。これ結構有効で、成功率は高いですね。
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棚の上でもこうして布をかぶせて乾燥します。これ、今年の秋の「日本伝統工芸展」のための作品です。
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特に底が厚いと割れやすい。それは何故かというと、底はもともと乾燥しにくくて、その上厚いと乾燥のスピードが底だけ遅いからです。するとこういう風の切れます。
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ですから、削りは側面より高台の中のほうが薄いほうが良いのです。
焼き物の専門的な話でした。
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by sueki-k | 2014-04-07 22:07 | 焼物の専門的な話

続・土のメモリー現象

先日、お皿が反った話を書きました。
その原因の一つに土のメモリー現象というのがあります。
その話は以前詳しく書きました。興味ある人は読んでみてください。(2008年11月25日)
今回のお皿に関しては、このことがあるので、もう一度簡単に書きます。
土には前の形を記憶していて、その形に戻ろうとする性質があります。つまり、お皿を作る時に縁を曲げますが、元の平らな形に戻ろうとします。その結果お皿が反るのです。それを防ぐにはどうしたら良いのか。一つには曲げた部分を竹などの堅いものでしっかり締めることです。また、余分に曲げて元に戻すというのも有効的です。その二つでかなり防げます。
もう一つ、乾燥の時に少し浮かすというのも効果があります。特に長い皿は反りやすいので効果的です。
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こんな感じです。これ、生徒の作品なのでやや反り気味ですが、まだ始めて2,3ヶ月の人のなので、仕方ないですね。
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by sueki-k | 2012-09-11 00:00 | 焼物の専門的な話

窯を直す(byけい)

5年前に穴窯を築いてから、もう17回窯を焚きました。窯の焚き口に近いところは、1300度くらいになります。何回も焚いて行くうちに窯が少しずつ変形してゆきます。なにしろレンガは重いのでやや横に広がり、最近ちょっと心配になってきました。なにしろ間違いは絶対に許されませんからね。で、窯を一部直すことにしました。
今の窯は9個目の窯です。今までは勉強のためもあって、全部こわして造り直していましたが、今回は一部にしました。じつはこういうのは初めての経験です。
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穴窯というのは原始的な窯です。
穴窯も含めて、窯は普通業者に頼みます。窯造りの職人はいるのです。私が京都に弟子入りしていたとき、幸運にも登り窯の造り直しがありました。50~60回焼くと壊して造り直すのです。その時も70歳くらいの元気なお爺ちゃんが先頭きって指示していました。ありがたいことにとても勉強になりました。
数年後独立して、私は自分で窯を築きました。一つはお金がないからですが、なんといっても自分で設計して自分で造りたかったからです。人に造ってもらうと、安全ですが、その代わりその窯に合わせなければなりません。自分で造るといろいろな失敗がある代わりに、勉強になります。気にいらなければ造り直すことも出来ます。
今の窯もある考えがあって、手前を幅広く造ってあります。でもやってみてちょっと不満。もう2,3年したら別の構造で造るつもりでした。でも、今回はちょっとだけ手直しにとどめます。
窯造りは面白い。ある意味で、窯もその人の作品といえます。窯によって焼き上がりがかなり違いますからね。本当はもう少し暇だったらもっともっと様々な窯を造りたいのですが、今は時間に追われて無理そうです。
今回の窯直しは5日間の予定です。もし興味ある方は手伝ってください。歓迎します。
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by sueki-k | 2009-08-16 20:34 | 焼物の専門的な話

辰砂について(byけい)

8月1日から10日まで、所沢の「チョコレートコスモス」(所沢市寿町21-13・℡04-2939-7759)というところで個展《佐藤火圭作陶展》をします。在廊は2日と10日です。写真は案内状用に撮ったものです。
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私のライフワークは須恵器ですが、こんなこともできます。賑やかでしょう?私はあまり模様は書かないのですが、無地ばかりだと飽きてくるので、たまにこんな模様を描いて遊んでいます。
この中に赤い急須とポットがあります。これは辰砂という釉薬です。焼物の世界では、赤い色は出すのが難しく、珍重されてきました。赤は柿右衛門が有名ですが、あれは辰砂ではありません。あれは、「上絵」といって、一度高温で焼いた後に低い温度で焼いたものです。
辰砂は銅を使って発色させます。銅線は赤いでしょう。そう銅の色は赤いのです。微妙なのは、銅が錆びると緑青といって緑色になります。これが窯の中でも起こるのです。ちょっと専門的になりますが、焼物を焼く場合、酸化と還元という焼き方2種類があります。酸化は空気(酸素)をたくさん入れて焼く、還元は酸素不足で焼く焼き方です。銅は酸化で焼くと緑色になり、還元で焼くと赤くなります。その赤くなったのを辰砂といい、緑になったものを「織部」と言います。織部は魯山人がよくやっていますね。
辰砂でもう一つ特徴的なのは、飛び易いことです。つまり焼いている最中に蒸発し易いのです。この辰砂も他の作品をギリギリに置くと移って赤い部分が出来ることがあります。これを利用して、サヤの回りに辰砂を塗って、その中に青磁の壷などを入れると、青磁に辰砂がボカシで移ります。私はやったことがありませんが、一度やってみたいですね。
赤い色が移ろいやすいのは焼物だけではありません。ペンキなども、時々見るのは、看板などで赤い色だけがよく飛んでいますね。これ何かあるのでしょうか?
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by sueki-k | 2009-07-22 23:01 | 焼物の専門的な話

雄土と雌土(byけい)

今、こんな季節にもかかわらず、土鍋を作っています。土鍋といっても、陶板とココットが主ですので、これは季節と関係ないかもしれません。ココットが今度サライで紹介されますので、今作っているのと、陶板は相変わらず注文が入っているので、とにかく1窯焼かなければなりません。
それできょうも土揉み&ロクロです。c0178008_21553736.jpg
土揉みには2種類あります。荒揉みと菊揉みです。荒揉みは土を混ぜるもが目的で、菊揉みは土の中の空気を抜くのが目的です。
ところで土には2種類あります。「雄土(オヅチ)」と「雌土(メヅチ)」です。土の固さは言うまでもなく、手で触って判断します。でも実際に遭遇するのは、手で触ったときと、揉んだときに違うことです。手で触って判断したときより、実際に揉み始めると思ったより硬いことがあります。つまり揉んでゆくと硬くなる、これを「雄土」といいます。反対に揉んでゆくと柔らかくなる、これを「雌土」といいます。ちょっといやらしい感じですが、でも実際にあるのです。
今、土鍋の土を使っていますが、これは典型的な雌土です。最初の感触より、揉むと柔らかいのです。反対に磁器の土は、最初に思ったより実際に揉んでゆくと硬くて苦労します。
焼物の世界では「土揉み3年」といいます。また「一に土、二に焼き、三に造り」ともいいます。まずは土なのです。硬い石を削る石の芸術家と柔らかい土をこねる陶芸家では精神構造は随分違うでしょうね。前にも書きましたが人が仕事を作るのでなく、仕事が人を作るのです。
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by sueki-k | 2009-06-07 22:16 | 焼物の専門的な話

煙突の話(けい)

きょうは窯焚き5日目。予定としては明日のお昼ころ焚き上がる予定です。
きょうは煙突の話をします。、大事な話なのですが、今窯焚きの真最中なので、手っ取り早くお話します。
窯というのは煙突がないと燃えません。但し昔の窯は煙突なしです。というのも斜面に窯を築いたので、窯自体が煙突なのです。
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何故煙突が必要なのかというと、煙突は温度が上がってくると、空気を引く力が出てくるのです。煙突をストローとすると、ストローで吸い上げる感じです。これを《引く力F》とすると、Fは高さに比例します。つまり、高さが倍になると、Fも倍になります。Fを大きくするには、レンガを積んで高さを高くしてやれば良いのです。もう一つ大事な要素があります。Fは、煙突の中の温度から外気の温度を引いた数に比例します。例えば、外気温が零度とします。煙突の中の温度が100度と200度ではFは倍になります。窯を焚いてゆくと、だんだん焚き口からの空気の吸い込み方が大きくなります。それはちゃんと理由があるのです。
これ、実は難しい式があるのですが、割愛します。意味だけ理解してください。
その式にない要素があります。それは煙突の太さです。煙突の太さを倍にしても引く力は変わりません。但しうんと細いと空気も流体ですので、流れが悪くなり引く力は小さくなります。基本的には関係ないということです。
ちょっと専門的な話になりましたが、知っておくと役に立つこともあるでしょう。
きょうはこの辺で・・・
明日はいよいよダンパーです。
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by sueki-k | 2009-04-18 21:13 | 焼物の専門的な話

重さの話(byけい)

一昨日、「良い徳利とは」というのを書きました。その最後の方に重さの話をしました。きょうはその続きです。
陶芸家にとって重さはとても重要です。やってみると判ります。よく、素人が陶芸教室で湯のみなどを作って、焼きあがった時に、持ってみて重さにビックリします。焼物は木などと違ってちょっと厚く作っても重くなります。そして、それは我々プロも同じです。
そこできょうは、こういう実験を紹介します。これは「科学的ということ」という本に載っていたものです。
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まず、マッチ箱を12個用意し、そこに10円玉を1個から12個まで入れます。(写真は4個しかありませんが、実際は12個です。)それを攪拌します。次に、3段に積んだマッチ箱を用意し、一番上に10円玉を12個入れます。そして、被験者に3段のマッチ箱を持ってもらい、それと同じ重さのマッチ箱を12個の中から選んでもらいます。本来なら12個の箱を選ぶ筈ですが、実際には12個より少ない箱を選びます。いくつのマッチ箱を選ぶと思いますか?なんと7個を選ぶのです。勿論いろいろな人にやってもらった平均です。これは何を意味するのでしょうか。《重心が上にあると軽く感じる》ということなのです。それもかなり軽く感じるのですね。
そこで思い出すのは、リュックサックです。軽いものは下へ、重いものは上へと教わりました。そうすると軽く感じるのです。
心理学的に考えると、重さというのは、下に引っ張られる感覚です。重いと感じることはそういうことです。同じ重さでも、手で持つのと担ぐのとでは、担ぐほうが軽く感じます。
そういうわけで、湯呑みなども重心が上に行くよう、下を軽くと意識して作ります。私の作品を持って、よく「思ったより軽いですね。」と言われます。その秘密は重心にあるのです。
《軽く感じる》ことと《軽い》ということは違います。私は軽いのは好きではありません。《ちゃんとした重さがありながら、軽く感じる》作品が良いと思っています。
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by sueki-k | 2009-04-04 20:11 | 焼物の専門的な話

良い徳利とは(byけい)

一昨日、大作が全部仕上がり、今、小物を作っています。
昨日は徳利を作りました。これらは須恵器になります。こういうものは一個ずつ形も大きさも変えます。酒好きの私としては楽しい仕事です。愛される徳利を作りたいですね。
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徳利と一輪挿しは似ていますが、作るときの意識は違います。一輪挿しは水が入って、漏れさえしなければどういう形でも許されます。でも徳利はいろいろな制限があります。一つはお酒を入れ易いこと。一輪挿しは水道の蛇口を細くして入れられるから、口が小さくても良い。徳利は一升瓶から入れ、かつ、お酒がこぼれないような口にしなければならない。なので、口はジョウゴのように広げてあります。また口のくびれの大きさも微妙です。お酒を注ぐときに良い音がしたほうがよい。大きすぎるとガバっと出て風情がない。コッコッコッと気持ちよく出て欲しい。そのためクビレの太さに神経を使います。
次に一輪挿しは持たないが、徳利は持ちます。つまり持ちやすい形と手触りが関係してきます。三角形の一輪挿しはあり得ますが、徳利は難しいでしょう。
それと関連して、重さも重要です。重い徳利は嫌われますが、一輪挿しはむしろ重いほうが良いかもしれません。でも今回、わざと重い徳利を作りました。その心は?---重い徳利だと、燗をする時になかなか温まりませんが、そのかわり、1回燗をすると冷めにくい。そんな徳利を作りました。
ところで、こんな徳利を作れないでしょうか。《お酒を注いでも注いでも出てくる徳利》。お酒を注いで、もうカラかなと思ってもまた出てくる。そんなのがあったら酒飲みとしては嬉しいですね。出来るのです!それは重心を出来るだけ上に持ってゆくのです。そうすると酒がまだ残っている状態でカラと錯覚します。カラと思いながら徳利を傾けるとまだ出てくる。逆に重心が下にあると、まだ残っていると思って徳利を傾けると、すでにカラだったりする。ガッカリですね。酒飲みをがっかりさせないためにも、私は魔法の徳利を作ってゆきます。
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by sueki-k | 2009-04-02 20:09 | 焼物の専門的な話