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陶芸家の森の日々                      ~佐藤火圭(けい)ワールドへようこそ!

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工芸は使うもの(byけい)

一昨日の個展での話の続きです。
個展では様々な話がお客様との間で交わされます。その中で、お客様がこんなことを言いました。「徳利は3斗飲むと自分のものになる。」3斗というと30升ですか。つまり300合。1日1合で300日です。大雑把に言うと毎日少しずつ飲むと1年で自分のものになる、という感じでしょうか。自分のものになるというのはいろいろな言い方が出来ると思います。一人前になるでもいいし、完成するでもいいでしょう。
工芸は使うもの(byけい)_c0178008_2058270.jpg

写真は、今回の個展に出した徳利と馬上盃です。馬上盃というのは、ぐい飲みの一種で、馬に乗りながらでも飲めるように、高台が高く、持ちやすくなっています。
焼物は、使って育てるとも言います。また以前書いたように、「作る人半分、使う人半分」とも言います。使って変化を楽しむものなのですね。ぐい飲みも毎日使ってゆくと、少しずつ変化してゆきます。
焼物は「工芸」という分野に属します。音楽は聴いて鑑賞するもの、絵や彫刻は見て鑑賞するもの、食べ物は食べて鑑賞するもの、そして工芸は使って鑑賞するものです。食べ物を100年見ていてもその味は分からないでしょう。その意味で、焼物も見ているだけではその良さは判らないものです。たとえばご飯茶碗をいくら見ていても、何が良くてなにが悪いのかわからないでしょう。使ってみて初めていろいろなことが判ります。
以前私のご飯茶碗を買ってくれた人が、割れてしまったのでこの山まで来られたことがありました。その人は私のご飯茶碗を気に入って使っていたのですが、ある時割ってしまい、他の茶碗を買ったが、どうしても気に入らない、で、八王子から私の工房にわざわざ買いにきました。重さ、持ち具合、肌触り等がどうしても他のものではしっくり来なかったそうです。こういうの、作者冥利に尽きますね。
よく個展を見て「眼の保養になりました」という人がいますが、少なくともご飯茶碗は眼の保養にはなりませんね。使って楽しみましょう。
by sueki-k | 2009-05-28 21:18 | 焼物の一般的な話