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陶芸家の森の日々                      ~佐藤火圭(けい)ワールドへようこそ!

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土のメモリー現象(byけい)

きょうは焼き物の話をします。
といってもかなり専門的な話です。プロの陶芸家も知らない人がいると思います。知らなくても作ることは出来ますが、やはり知っている方がいいと思います。なので、アマ・プロを問わず、焼き物を作っている人は心して読んでください。
土には「メモリー現象」というのがあります。つまり元の形を記憶しているのです。記憶合金みたいですね。たとえば平らに伸ばした土の板を、一度曲げてから元に戻します。すると乾いたり焼いたりする過程で、少し曲がります。曲げた状態を記憶していて、元の平らに戻しても曲がるのです。これはあらゆる状態で出てきます。例えば、ロクロを挽いていて、失敗して少し歪んだとします。それを元に戻して丸くしても、焼きあがるとわずかですが、歪みます。面白いのは、ロクロ作品です。たとえば湯呑みを例にとると、湯呑みの作り方としては、ロクロ成形と型で作るケースがあります。型の場合は問題ありませんが、ロクロの場合、ねじれているので、焼くとそれが元に戻ろうとします。ロクロ成形した湯呑みに垂直に線をひいておくと、焼きあがったものはその線が少し曲がります。単なる湯呑みはその歪みは問題ありませんが、例えば取っ手をつけた場合、影響します。
成形でタタラという作り方があります。土の塊を針金でスライスして土の板を作り、それを曲げて皿などを作ります。その時にやはりこのメモリー現象が影響します。初心者が作るとだいたい平べったく焼き上がりますね。
土のメモリー現象(byけい)_c0178008_19182634.jpg

さて急須です。
急須はいろいろな意味で作るのが難しい。まずパーツが4個あり、蓋が合わないと格好悪い。重い急須は嫌われるから、薄く作る必要があります。取っ手が持ちにくいのも駄目。水切れが悪いのも駄目、ハードルがいくつもあります。急須がちゃんと出来るようになれば、小物は卒業です。
ところで、この急須の口はどうやって作ると思いますか?これはロクロでミニ一輪挿しのようなものを作り、それを斜めにカットしてくっつけるのです。問題は口です。最後に口をカットするのですが、これが焼きあがると少しねじれるのです。そのねじれを計算に入れてカットしないと、焼きあがった作品は口が曲がってしまいます。といってもほんの僅かですので、知らなくてもやっていけますが・・・
今度急須に出会ったら、その辺を注意して見てみてください。但し手作りのものに限ります。
by sueki-k | 2008-11-24 19:39 | 焼物の専門的な話